医院名 |
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医療法人南斗会 しらさぎ耳鼻咽喉科クリニック |
理事長 |
今吉 正一郎 |
住所 |
〒329-0618 栃木県河内郡上三川町しらさぎ2-25-7 |
診療科目 |
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電話番号 |
0285-57-1133 |
耳の穴の奥には薄い透明な膜が障子のように貼っており、鼓膜と呼んでいます。鼓膜の向こう側は空気が入った部屋があり、鼓室と呼ばれます。鼓室の中はがらんどうで、小さい骨が並んでいます。この骨が鼓膜の振動を内耳という神経の端っこに伝える役割をしています。鼓膜と鼓室をあわせて中耳と言います。
この鼓室の中に細菌が繁殖して水や膿が溜まったり炎症を起こして鼓室や鼓膜が赤く腫れる病気が中耳炎です。
中耳炎にはいくつか種類があります。急性中耳炎は鼓室の中で急激に細菌が繁殖して感染を起こし、強い炎症状態になったものです。鼓室に膿が溜まるため圧が高くなり激しく痛みます。熱が出ることもあります。
それに対して滲出性中耳炎は感染はしていても炎症はおこさず水がたまっただけで痛みはありません。しかし水がたまるため聞こえづらくなります。こどもの場合訴えが少ないため気づきづらいのですが、聞き返しが多くなることで気づかれることがあります。風邪を引いた後一過性に滲出性中耳炎になることが子供ではよくみられます。この場合は風邪が治れば中耳炎も自然に治ることがほとんどです。しかし風邪も引いていないのに慢性的に滲出性中耳炎がある子もおり、このような子で薬で治らない場合には手術で鼓膜に穴を開けたり、鼓膜にチューブをさして水がたまらないようにします。
ちなみに、中耳炎は鼻内の細菌が耳管を通って鼓室内に入って起こるものなので、プールなどで耳から水が入っても中耳炎になることはありません。これも都市伝説ですね。耳から水が入っても、鼓膜に穴でも空いている限り鼓室に入り込むことはありませんし、鼓膜に穴が空いていればそもそも鼓室に水や膿がたまりません。
人間には細菌や花粉やそのほか諸々の外界の物質を、これは異物だと判断してこれを攻撃したり防御反応を起こす能力があります。これを免疫機能と言います。免疫機能は生物が生存するためにとても大切な機能なのですが、この免疫機能が暴走すると体にとって時に有害になることがあります。このような状態をアレルギーと呼びます。アレルギーは様々な症状を起こしますが、アレルギーが原因でくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの鼻炎症状を起こす病気をアレルギー性鼻炎と呼びます。
また、人間の体にとって異物は無数と言っていいほど種類があります。その異物のうちで、アレルギーを起こさせる物質をアレルゲンと言います。スギ花粉や、ダニの死骸は代表的なアレルゲンですが、アレルギーを起こさない人も多くいます。
スギ花粉が原因で発症したアレルギー性鼻炎のことを花粉症と言います。今や日本人の4〜5人に一人は花粉症とも言われています。
花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎は、体質的なものなので根本的な治療は困難です。
アレルギー性鼻炎の薬の多くは抗ヒスタミン薬と呼ばれるもので、これはアレルギーを治すものではなく、くしゃみ鼻水鼻づまりといったアレルギー症状を抑える対症療法薬なのです。ですので、花粉症の薬をずっとのんでいるけどちっとも治らないというのはある意味当然で、この薬はのんでいる間は症状が抑えられるけどのむのをやめればまた再燃します。花粉症は花粉が飛んでいる春先だけ症状を抑えればあとは無症状になるので、対症療法だけでしのぐのはある意味理にかなっています。花粉症には色々な薬が出て来ていますが、費用対効果を考えれば今後も抗ヒスタミン薬は花粉症の治療の中心的存在であり続けるでしょう。
ちくのう症は蓄膿症と書きます。読んで字のごとく膿がたまる病気です。どこにたまるかというと、副鼻腔というところにたまります。
ちくのう症というのは俗称で、正式には副鼻腔炎といいます。副鼻腔とはあまり聞きなれない言葉ですが、実は顔の半分は副鼻腔でできています。
鼻の穴から鼻の中をのぞき込んだ時、直に見える空間を鼻腔(固有鼻腔)と言います。副とは副える(そえる)と読み下せるのですが、字の通り(固有)鼻腔にそえもののようにくっついている空間を副鼻腔といいます。ですので鼻の穴からは副鼻腔は見えません。
健康な副鼻腔は中に空気しかないがらんどうです。副鼻腔と鼻腔は小さい穴でつながっており、何かの原因でこの穴がふさがって密室になってしまうとで炎症を起こして副鼻腔の粘膜がむくんで厚ぼったくなってきます。むくんだ粘膜が副鼻腔の中に収まり切らないほどになると、連絡穴から鼻腔内に粘膜がはみ出してきます。これをポリープとか鼻茸と呼んでいます。
昔はちくのう症の治療は、唇の裏を切って、副鼻腔の中の掃除をする手術が多く行われていました。
現在は飲み薬で治すことが一般的です。ただししばらくの間(3ヶ月以上)のむ必要があります。薬で治らない場合は手術しますが、昔のように唇の裏を切ることはせず、内視鏡をつかって鼻の穴から行うことがほとんどです。このため患者さんの体の負担はだいぶ少なくなりました。
鼻血とは正式には鼻出血と言います。当たり前ですが、出血は血管が切れたために起こります。鼻出血も当然鼻の中の血管が切れたために起こります。
鼻の中は鼻粘膜という粘膜が張り巡らされており、全体に粘膜には血管が豊富です。特に鼻の穴の近くには微細な血管が特に豊富に走っている場所があり、鼻血のほとんどはこの鼻の穴の近くから出てきます。医学用語でキーゼルバッハ部位と言います。鼻血の9割以上はこのキーゼルバッハ部位からの出血なので、鼻血はここを抑えれば止まります。
どうするかというと、鼻の尾翼部、いわゆる小鼻の部分を指で両側から挟めばいいのです。よく鼻の上方の硬い部分、鼻骨という骨のところを抑えるといいと言われますがこれは間違いです。私も子供の頃母親からそう教わったぐらい膾炙していますがここを抑えても止まりません。
鼻血は血管が切れたため起こるので、切れた血管が戻れば出血しなくなります。ですが切れた血管が戻るまで1週間ぐらいかかるので、その間はちょっとした刺激でまた出血します。鼻血が繰り返すのはこのためです。鼻血がでたら抑えて止めて、止まったら1週間ぐらいはそっとしておけば治るというわけです。
耳の穴の入り口から鼓膜の手前までのトンネルの部分を外耳道と言います。外耳道は皮膚なので、当然皮膚からは垢が剥がれ落ちて耳の中にたまります。これが耳垢です。また外耳道皮膚には皮脂腺があり、ここからです油成分が湿った耳垢、いわゆる飴耳あめみみを作ります。
ちなみに耳垢が湿っているか乾燥しているかは遺伝で決まっており、日本人の7割が乾燥型と言われています。遺伝的には湿った耳垢の方が優性遺伝です。耳のきれい汚いは耳垢の性状とは関係がないのです。
最近よく言われるようになりましたが、耳垢はよっぽどのことがない限り掃除する必要はありません。耳垢はあるのが普通なのです。我々耳鼻科医は鼓膜を観察する必要があるので耳垢を取り除きますが、そういった目的でもない限り耳掻きはしなくて構いません。耳掻きは外耳道を傷つけてしまい、感染の元になるのでむしろしてはいけないという人もいるほどです。
まあ、耳がかゆいことはよくありますし、耳掻きはすると気持ちがいいので、私自身も耳掻きをしてしまうことはよくあります。なので偉そうなことは言えませんが、耳掻きはしない方がいいというのは確かです。
耳垢が詰まってしまう耳垢栓塞(せんそく)という病気があります。耳垢が詰まって外耳道がふさがってしまう状態です。耳の穴が詰まるので音が聞こえにくくなります。こうならないために耳掃除をした方がいいと思うかもしれませんが、実は逆で、綿棒などで耳掃除をするとかえって耳垢を奥に押し込んで詰まってしまいます。耳掃除が原因で耳垢栓塞を起こしてしまうわけです。こうなると普通の耳掻きでは取れないため耳鼻科で除去しないといけなくなります。耳掻きはほどほどにしましょう。
難聴は聞こえが悪くなった状態です。
耳の聞こえの力は、ざっくりいうと鼓膜の力と聞こえの神経の力の二つから成り立っています。鼓膜は空気の振動を神経に伝える働きをしていて、神経は音の振動を電気信号に変換して脳に伝える働きをしています。
このどちらか、または両方が低下すると聞こえが悪くなり難聴になります。
鼓膜の力が悪くなる代表的な病気が中耳炎です。中耳炎は治すことができますので、鼓膜の力が悪くなった難聴(伝音難聴と言います)は治ることが多いです。
それに対して神経の力が悪くなる難聴(感音難聴と言います)は難治であることが多いです。代表的なものは加齢性難聴で、お年を召した方が耳が遠くなるのは年齢とともに神経の働きが悪くなるためで、回復する方法はありません。残念ながら一旦低下してしまった神経は現在の医学では元に戻すことはできないのです。ノーベル賞をとったiPS細胞などがうまくいけば神経を再生することができるかもしれませんが、私が生きている間でも実用化するのは難しいかもしれませんね。
耳の聞こえが悪くなった人は補聴器をつかって聞こえの助けを行います。補聴器とは読んで字のごとく、「聴力を補う機器」ですので、低下した聴力の分だけ大きな音を耳に入れる機械です。
音を大きく増幅する機械なので、聴力が全くなくなった人には使えません。少しでも音を感じる力が残っていれば使うことができます。
しかし補聴器はメガネと違い、つくってつければすぐに使えるものではなく、少なくとも3ヶ月から半年間は我慢して、補聴器の微調整をしながら体に慣らす必要があります。補聴器を初めてつけた人は、多い少ないは人それぞれですが、まず例外なく不快感を覚えるそうです。例えば食器のかちゃかちゃという音が妙に響いたりして不快になるそうです。そこでやめてしまうと補聴器は使えないまま放置されることになるのですが、せめて3ヶ月間我慢して調整を続けると体に馴染んできて生活が楽になってきます。
人工内耳という言葉を聞いて、皆さんはどんな印象をお持ちになるでしょうか。イメージがわかないという方がほとんどではないでしょうか。実は人工内耳は耳鼻科医ならいざ知らず、それ以外の医者でも誤解が多い事柄なのです。
補聴器も効果がないような重度の難聴の人に対して人工内耳と呼ばれる機械を手術で埋め込む治療です。内耳は空気の振動を電気信号に変換して神経に信号を送る器官ですが、人工内耳は機能を失ってしまった内耳の代わりに直接電気信号を神経に送る機械です。
人工内耳手術を行う人は、聴力が完全に喪失した人に限られます。両耳とも全く聞こえない人が対象です。どちらかの耳に少しでも聴力が残っていれば補聴器が使えるので人工内耳の手術が行われることはまずありません。
何故ならば人工内耳は大掛かりな手術が必要だからです。全身麻酔が必要なので、体に負担がかかりすぎるのです。また人工内耳は字のごとく人工物なので、体にとっては異物です。異物を体の中に入れるのはそれなりに危険が伴います。
最後に、人工内耳をいれても今までのように普通に聞こえるわけではないということです。ここが誤解の多いことなのですが、人工内耳を入れて聞いた音はこれまでと全く違う音が聞こえるそうです。人工内耳を入れても元の聞こえに戻るわけではないのです。
アレルギーは体質の問題なので、根本的に治療は難しいと書きましたが、唯一アレルギーの体質を改善できる治療があります。それが減感作と言われている治療法です。
減感作の原理を説明しますと、花粉なり卵なり、アレルギーを起こす物質(アレルゲン)をアレルギーを起こさない程度のごく少量を体内に摂取させます。それを毎日繰り返し行って、徐々に一回に摂取させる量を増やしていきます。すると体がアレルゲンになれるのか、本来ならアレルギーを起こす量を超えて摂取してもアレルギー反応が起こらなくなるのです。これを減感作治療とか免疫治療と呼びます。
その厳密な機序は分かっていませんが、減感作治療の原理は昔から知られていました。なので花粉症の減感作治療は以前からありましたが、スギ花粉アレルゲンを体内に取り込む方法が、注射しかなかったのです。また減感作治療はデリケートな治療で、量を間違えるとアナフィラキシーという場合によっては致命的な副作用が起こる可能性があり、大学病院など限られた施設でしか行われていませんでした。
近年内服(厳密には舌の下に薬をいれる舌下薬ですが)で摂取できる方法が開発され、舌下免疫治療と呼ばれます。これだとアナフィラキシーの危険が注射よりも少なく(全くのゼロというわけではありません)、普通のクリニックでも処方しやすいためこの方法が広まってきました。
ただ減感作治療全般に言えることですが、減感作は即効性がなく、効果が現れるまでに少なくとも1年ほどかかります。また治療が完成するまでに3〜5年はかかると言われており、舌下免疫治療では治療が完成するまで、できればその後も毎日毎日薬をのみつづける必要があります。
人はなぜ病気になるのでしょう。
医学的知識がなかった昔、呪いとか祟りが原因と考えられていました。現在では病気の原因は様々あることがわかってきましたが、そのうちのあるものは細菌やウィルスが感染することで発症することがわかっています。
細菌とウィルスについて説明したいと思います。
1590年にオランダのヤンセン親子によって顕微鏡が発明され、レーウェンフックという人によって細菌が発見されました。細菌は0.01mmぐらいの大きさの小さな生物です。この生物が体に感染して病気をおこします。以前は最も恐れられた結核は、結核菌という細菌が感染することで発症します。抗生物質は細菌を殺したり細菌の増殖を抑える物質です。ですので細菌感染には抗生物質を投与することが多いのです。
一方ウィルスは細菌とは全く異なります。ウィルスは厳密には生物ではないとされています。ウィルスは遺伝物質であるDNA(またはRNA)がタンパク質の殻に包まれただけの単純な構造で、ウィルスそれだけでは増殖することができないのです。大きさも細菌に比べてはるかに小さく、細菌がマイクロメートルの大きさであるのに対し、ウィルスはナノメートルの大きさしかありません。細菌は一般の光学顕微鏡で観察できますが、ウィルスは電子顕微鏡でないと見ることができません。インフルエンザはインフルエンザウィルスというウィルスの感染で起こる病気です。細菌は抗生物質が有効ですが、ウィルスは細菌とは異なるためウィルスには抗生物質は効果がありません。抗ウィルス薬が存在するウィルスもあるのですが、一般にウィルス感染による病気は自然治癒を待つしかありません。
ものの本によると、かぜ、水虫、ガン、このどれか一つでも完全に治す方法を見つけたらノーベル賞を取れるという都市伝説があります。また昔から風邪は万病のもとともいいます。あまたある病気の中で、風邪は最も一般的な病気です。
現在の医学では、風邪はウィルス感染であるというのが定説となっています。風邪を引き起こすウィルスは一種類ではなく、ライノウィルスと呼ばれるウィルスをはじめとしたいくつかの種類のウィルスがのどの粘膜や気管支粘膜に感染して咽頭炎や気管支炎を起こし、風邪をひくと考えられています。
風邪はウィルスが原因ですから、抗生物質は意味がありません。端的にいえば、風邪は寝て治すのが一番なのです。体にもともと備わっている自然治癒力です。世の中にはかぜの薬が多くありますが、いずれも解熱薬や鼻水を止める薬なので、風邪を治す薬ではなく症状を抑える対症療法薬なのです。ですので風邪薬をのんでも風邪は治りません。解熱薬などはかえって治りを遅らせてしまう可能性もあります。
ただ、仕事をお持ちの方々は風邪ぐらいで休んでいられないという方が多いため、対症療法薬で症状を抑えて仕事をしたいという希望があるために使用することも多いのです。しかしながら、自然治癒力はその人の体力と密接に関連しているため、風邪を引きながら仕事を続けることで体力が消耗してしまい、かえって風邪の治りが遅くなることもありえます。
レーザー光線で鼻の中の粘膜を焼く治療を、鼻粘膜レーザー焼灼術と言います。
唐突ですが、みなさん焼肉はお好きでしょうか?目の前で生肉が直火で焼かれていくあの光景はたまりません。
その焼肉を思い出していただけますでしょうか。生の肉は火で焼いたり炙ったりすると縮まります。それと同じで、鼻粘膜レーザー焼灼術は鼻の中の粘膜を火ではなくレーザーで焼きます。するとレーザーで焼かれた鼻の粘膜は縮まり、その部分のむくみがとれて鼻づまりを解消することができます。
鼻粘膜レーザー焼灼術は、主にアレルギー性鼻炎などで鼻づまりが強い人に行う治療です。医療保険上、手術の一つに分類されているため、術という字がつきますが、手術といっても全身麻酔をかけて眠らせて行う訳ではなく、局所麻酔で行う手術なので入院する必要はありません。麻酔は麻酔薬を染み込ませたガーゼを鼻に入れるだけなので、注射もしません。ガーゼ麻酔だけで粘膜を焼く痛みはほとんどありません。当院でも力を入れている治療です。
アレルギー性鼻炎の人は、アレルギーのため鼻の粘膜がむくんでしまい、これが鼻づまりや鼻水の原因になっています。粘膜がむくむと本来空気が通るはずの空間が狭くなってしまい、最悪の場合は空気が通る空間が全く無くなります。これが鼻づまりを起こす原因です。ですので鼻の中の粘膜のむくみをとってあげれば空気の通るスペースが生まれ、鼻づまりが解消します。鼻の中の全部の粘膜を焼く訳ではなく、下鼻甲介と呼ばれる、粘膜の一部分だけを焼きます。一部分焼くだけでも鼻づまりを解消することができます。
アレルギー性鼻炎をはじめとするアレルギー性疾患は本来体質的な病気なので、レーザーで鼻の粘膜を焼いたぐらいでは残念ながらアレルギー体質を改善することはできません。ですのでレーザー治療でアレルギー性鼻炎を完治させることはできませんし、アレルギーによる鼻の症状が100%消失する訳でもありません。しかし粘膜をレーザーで焼くことで、鼻づまりをはじめとする鼻炎の症状をある程度軽くすることができ、生活の質が改善することが期待できます。アレルギー性鼻炎でなくても何らかの原因で鼻づまりがとれないという方にも効果が期待できます。
当院でもレーザー治療(鼻粘膜レーザー焼灼術)を行なっております。麻酔を含めて1時間程度で終了します。興味のある方は気軽にお尋ねください。